もはや、テクノロジーなくして、私たちの暮らしや仕事は成り立ちません。そして革新的なテクノロジーは、多くの個人や研究機関、企業などのたゆまざる努力によって生み出されてきました。そんな企業のひとつHPは、1939年の創業以来さまざまな革新的なテクノロジーを生み出し、人々が気軽に利用できる製品として世に送り出してきました。HP Reinvent World 2018では、今も変わらぬその取り組みの最新動向のいくつかが紹介されました。
革新を続け、世の中にないものを生み出していく
東京会場では、受付時間前から来場者が訪れ、用意された本会場の席はすぐに満席になってしまいました。あふれた来場者は、そのような場合のために用意されたサテライト会場へ。リモートで大スクリーンに映し出される各セッションの様子を注視していました。
最初は、日本HP 代表取締役 社長執行役員 岡隆史氏が登壇し、「将来に向けたHPの事業戦略」を紹介しました。会社概要を紹介した後、HPのビジョンである「Keep Reinventing(革新のその先へ)」を紹介。「HPは、創業以来世の中にないものを追求してきました。そして、これからもテクノロジーで世界をリードしていきたい」と宣言。さらに、直近から2、3年先の注力分野、さらには将来を見据えた投資状況などを説明しました。とりわけ、デジタルと現実の融合を実現するVR/ARや3Dプリンターなどへの投資を加速しており、既にいくつかの製品として結実していることなどが語られました。
■基調講演
最新テクノロジーが切り拓く未来
~バーチャルリアリティの可能性とそこから生まれるこれからのビジネス~
東京大学名誉教授 舘暲(たち すすむ)氏
基調講演は、1980年世界で初めて「テレイグジスタンス」という概念を提唱した東京大学 名誉教授の舘氏。テレイグジスタンスとは、「離れて存在すること、あるいは、そのように感じること」と定義され、現在のVR/ARのように異世界などに没入するだけでなく、離れた場所にいるロボットなどを自分自身のアバターとして制御することで、自分があたかも離れた場所に存在するかのような状態をつくり、活動できる環境を生みだすものです。
テレイグジスタンスは、遠隔地からの操作をその場にいるかのように実施できるので、「災害現場や宇宙など人間が行けない場所での物資の運搬や機器の操作、遠隔地からの手術のような高度な遠隔医療、遠出ができない高齢者の孫の結婚式への出席など多様な活用が期待できます」と語ります。
その一例として、舘氏が会長を務めるTelexistence inc.が開発したテレイグジスタンスロボット「TELESAR V(テレサ5)」を紹介。操作者はヘッドマウントディスプレイとグローブを装着し、遠隔地にいるTELESAR Vが見た映像や、触ったものの細やかな触感を自分の体験のように感じることができます。細やかな触感まで感じることができるので、より繊細な作業を支援可能。各種エンターテインメントや医療・介護分野など、使い方次第で多くの可能性を秘めています。
最後に、テレイグジスタンス(アバター)が、コンペを通して人類のための根本的なブレークスルーをもたらすことによって、新たな産業の創出と市場の再活性化を刺激することを使命とする「XPRIZE」の次期テーマに決定したことを紹介。舘氏は、「米国の民間宇宙輸送会社 スペースXは、XPRIZEの競争のなかで設立され、宇宙輸送という新産業分野が生まれました。テレイグジスタンスも世界中からの参加者による競争によって、新しい産業が起こるでしょう」と期待を語りました。
■セッション
「HP OFFICE OF THE FUTURE
~未来のオフィスを創造し、これからの働き方をデザインする~」
株式会社日本HP 専務執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 九嶋俊一 氏
まず九嶋氏は、効率を重視する「産業の時代」から、権限が重要な「情報の時代」を経て、これからは結束が重要な「体験の時代」になると指摘。「体験の時代には、現在のオフィスの課題を解決するデバイスやオフィススペース、コラボレーションスタイルが必要になる」として、そのための2017年現在の新たな製品として、2D/3Dスキャニング機能を搭載したイマーシブコンピュータ「Sprout Pro by HP」やVR用バックパック型ワークステーション「HP Z VR Backpack G1 Workstation」などが語られました。
そして今現在もっとも注力している分野としてサイバーセキュリティを挙げ、エンドポイントであるデバイスのセキュリティの重要性を強調。「攻撃はますます巧妙になる一方、働き方が柔軟になり、防御しにくくなっています。侵害を受けることを前提に対策を考える必要があります」と警鐘を鳴らします。
最近の傾向として、「Windows 10がセキュリティを強化したこともあり、ファームウェアやBIOSへの攻撃が増加しています」と指摘。その対応としてHPは、自己回復BIOS「HP Sure Start Gen3」や、OSから分離した仮想環境で実行するブラウザにより、万一マルウェアに感染してもタブを閉じるだけで駆除できる「HP Sure Click」、簡単なキー操作だけで斜めから画面が見えにくくなる「HP Sure View」などの新機能をPCに搭載(※)。「万一侵害されても、すばやくクリーンな状態に戻すことが可能です」。
最後に九嶋氏は、「これからも、世界で最も安全で管理性の高いPCを追求していきます」と語りました。
宇宙開発とバーチャルリアリティ 火星都市計画とVR プロジェクト優秀賞プレゼン
HPは、現在VRを通して火星移住計画を考える「HP Mars Home Planet」を、世界中で展開しています。日本では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の全面協力のもと、火星に100万人が移住したと想定して、火星上の建築物や市街、輸送手段などインフラのコンセプト案を考え、優秀作品をVR化するというコンテストが実施され、総勢103チーム、410名の学生が参加しています。
本セッションでは、本プロジェクトの責任者である日本HP パーソナルシステムズ事業本部 パーソナルシステムズ・マーケティング部 部長 甲斐博一氏が、プロジェクトの概要やこれまでの進捗を紹介。その後、学生たちの学校での取り組みや、日本HPが主催したワークショップ、第一フェーズの決勝プレゼンの様子などをまとめたビデオを上映した後、第一フェーズで決勝プレゼンに勝ち残った8チームの内の1チーム、広尾学園高校の5名による「MarS+HG」がプレゼンを実施しました。「地球の皆さん、こんにちは。私たちは未来の火星から時空を超えてやってきました」というユニークなあいさつの後、火星の住居、移動手段、都市構造などを説明。いずれも科学的根拠のある説得力を持ったプランで、参加者も真剣に聞き入っており、彼らのプレゼンが終わった時は、大きな拍手が起こりました。
その後、再度甲斐氏にマイクが渡され、今後の活動予定などを紹介。最後に今回のプロジェクトのねらいを、「答えのない問いへの飽くなきチャレンジ」、「協働力」、「テクノロジーの可能性」としたうえで、「この課題は、すべて現在の日本企業にあてはまる課題だと考えています。日本HPは、私たちの持つテクノロジー、さらにはこれから開発していくテクノロジーで、これらの課題解決に向け、皆さまを支えていきます」と締めくくりました。
Windows 10の緊急セッションやVRデモも盛況
最後のセッションは、「Windows 10 PCの企業内でのベーシック運用」と題して、2017年後半から急激に企業導入が増えているWindows 10の運用に関する基本情報や運用の考え方、ノウハウなどを紹介しました。このセッションはイベントに先立つアンケートで情報不足に悩んでいるお客さまが非常に多かったことから緊急企画として実施したもので、最後のセッションながら、多くの参加者が最後まで残って説明を聞いていました。
講演会場に隣接する展示スペースでは、PCやタブレットから、VR端末やワークステーション、3Dプリンター出力物のサンプルなど、さまざまな最新製品を展示。なかでも、VR開発向けのバックパック型ワークステーション「HP Z VR Backpack G1 Workstation」の実演コーナーは、多くの人が集まり、順番にVR体験を試みていました。
「Tech & Device TV」では、これからも新しいテクノロジーの話題を紹介していきます。
ぜひご期待ください。
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